5.
オレの仕事はもっぱら解体なんだけど、愛嬌があるとかでたまにレジ番をさせられる。本当はやなんだけどね。可愛い声を出して誘いだし、店の裏でキュっと締めて血抜きして、バラしてダマしてあなたの食卓へ。なんつって。
たまにレジに立つと変な客がくる。陳列台の前で肉を睨みつけ、脂汗を流して息も荒い。肉が好きなのかな?と思って見ていると、何も買わないで帰ってしまう。変な客だと思ったけど、それが二度、三度となると気になる。先輩に聞いてみる。
「ああ、あいつは人の8倍くらい肉が好きだけど、アレルギーで肉は食えないヤツなんだ。」
「へぇ。だから買わないんすか。」
「今度来たら見てみ。【略】。ぐふふ。」
「はぁ?」
遠目にじっと確認してみると……【略】どうやら食欲だけじゃあなくて【略】肉は食べられないのに、そのパワーはどこから?豆かな?豆はすごいらしい。何か話でもしてみようとレジから出ると、さっと店から出て行った。なんなんだあいつわ。
同じく肉は食べられないヤツでも、今度は普通のベジタリアンが現れた。区役所で会ったアイツだ。
「あいにくトリ肉は扱ってませんぜ。ダンナ。」
「仮にあったとしても、鶏肉も食べないんだ。」
「じゃあ、お魚は?」
「魚も食べないよ。」
「へぇ。じゃあ今日は何をお探しで?モツですか?」
野菜以外食わないっつーの!みたいなツッコミを期待してバカみたいな質問を続けてみたけど、慣れているのか、ベジタリアンは特に気にする様子もなく、するっと話題を変えた。
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- 11「精神が、魂も空に上っていくとするならば、もうあの街に届いているかも。」
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- 8「一度は否定しても、胸の中に湧き上がってくる感情が、その否定を否定する。」
- 7「同じく肉は食べられないヤツでも、今度は普通のベジタリアンが現れた。」
- 6「愛する愛さないってのは血の繋がりとかじゃないでしょ!」
- 5「空を見上げるとあの街の明かりも消えていた。」
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