2014年2月14日金曜日

5「空を見上げるとあの街の明かりも消えていた。」

 4.

 ユラの仕事が終わる頃に店に向かう。街のケバケバしい騒々しいネオンは消えていた。空を見上げるとあの街の明かりも消えていた。ビルの窓からところどころ光が漏れていた。真っ暗じゃあなくても薄暗さは、少しはこの街の汚さを隠してくれる。道端に転がっているヤツは……げ、死体か。明日、店に運ばれてくるかね。もう腐ってたらそのまま処分場に持っていかれるかも?焼かれてお湯を温めて肥料になるのかも。

「ありがとね。」

 ユラはそっけなく言う。本当にありがとうって思っているのだろうか?ユラは女の子っぽいヤツだから、夜道とか苦手そうだけど。

「もうちょっと最後の方にしたら良かったかな。順番。」

 まぁ、おかげで区役所とかに寄れた訳だけど。

「何してたの?」
「家でぼーっとしてたよ。寝てた。」

 なぜか小さなウソをついていた。照れ臭いからかな。頭をポリポリとかきながら、左手は上着のポケットに突っ込む。

「ふーん。どっち?」

 上目遣いで下から覗き込んでくる。ああ、やっぱりこういう表情がたまらなく好き。

「私、結婚とかしないからね。」
「ええ!?」

 ……いかん。また高い声が出た。声に、喉に引っ張られてカカトも浮かんだ。いかん。少し間をおいて切り返す。

「……でもさ。オレ達、もう、ずいぶん一緒に住んでいるからさ。そろそろ。」
「別に形にコダワラなくていいじゃん。」

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