「この選別で一番大事なことを教えてやろうか?」
「?」
「何があっても死なないこと。ケツまくって逃げ回れるヤツがなんだかんだで生き残るもんさ。」
「なんか、情けないね。」
「……見てみろ。あいつらみたいに参加する前から雄叫びを上げまくっているようなヤツらはすぐ死ぬ。一人殺した後に殺されるか、その逆さ。」
「へ、へぇ。」
そんなモノかな?と思えた。確かに、ひゃっはー!ってなっている間に別のひゃっはー!に殺されるとかあるのかも。
「……一番死なないのは、案外お前みたいな臆病なビビり屋さ。」
急にグっと顔を近づけてきて、さっきより低い声でそう言って、赤い丸いモノを机の上においた。
「何これ?」
「お守りさ。」
そうしてほとんど乱痴気騒ぎだった選別説明会は終了し、家に帰った。ユラはまだ帰ってない。赤い丸いモノは古臭いバッチで、手の上で転がしていると裏面に小さな紙が挟んであるのに気付く。細かく几帳面な感じで何かが書いてある。
『このバッチをつけている連中は仲間だ。死にたくなかったら同じバッチをつけているヤツには手を出すな。とにかく逃げろ。最後まで残れたら命は助ける。』
……最後まで残ったら死んでないっつーの!と思う。よく分からないけど、何かに巻き込まれている?のるかそるか?信じるか信じないか?改めて自分の細腕を見ると……さぁ、どんな風に逃げ回ろうかな?情けない。情けないけど死にたくない。
2014年2月14日金曜日
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