3.
だったら役所にでも行くかね。ユラは全然首を縦に振らなくて、いつも書類を捨ててしまうけど、カタチって大事だと思うんだけどな。せめて。捨てられてもいいように二枚貰っておこうかな。
ちょうど区役所についた時は夜の礼拝の時間だったみたいで、その場にいる人らは皆して床にひざまずいていた。職員もイスから降りて礼拝している。私はそこまでじゃあないけど、神妙な顔をしておく。筆記コーナーにリーフレットがおいてあった。
『いわく、我々は、空にて生まれ、地に落ちた。
いわく、いつの日か、空に帰るために、我々は尊くあらねばならない。
いわく、大いなる意思、海、母胎樹に還ることが……。』
この教義は好きだけどね。心が温まる……というか。スピーカーからはリーフレットと同じ内容が放送されている。ありがたいお経です。いわく、いわく……気がつくと私もひざまずいていた。
受付の不美人な職員に「またですか?」という顔をされて、婚姻届を渡される。ダブルをリクエストすると却下された。一緒になんやかんやチラシを渡される。ゴミの日とか納税がどうとか。用も済んだし家に帰ろうとした時に変な男に呼び止められた。
「君、肉屋の鶫さんだね?」
「そうだけど?あんたは?」
「私はiraの組合長をやっている者だが。」
「あ、そう。仕事の話なら、また。もうヒケてるんでね。あと、『鶫さん』はやめてもらえないかな?あんまり好きじゃなくてね。」
「それは申し訳なかった。じゃあ、また仕事中に行かせてもらうよ。」
「悪いね。合い挽きミンチならオマケできるから。」
「あいにくベジタリアンなんだ。」
「あ、そう。」
変な男は変な笑みを浮かべて去っていった。迷彩柄のいかつい服にベレー帽。張り付いたような笑顔。怪しい。なんだあいつわ。さて、帰って一眠りするかな。その前に『【略】』にでも寄って行くかな。何か新作が出ているかも?
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- 14「帰ってくるさ。また会えるさ。」試し読み終了
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- 11「精神が、魂も空に上っていくとするならば、もうあの街に届いているかも。」
- 10「捨てたモノの中に宝物が混じっているように、この街の人間にもチャンスが残されている。」
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- 8「一度は否定しても、胸の中に湧き上がってくる感情が、その否定を否定する。」
- 7「同じく肉は食べられないヤツでも、今度は普通のベジタリアンが現れた。」
- 6「愛する愛さないってのは血の繋がりとかじゃないでしょ!」
- 5「空を見上げるとあの街の明かりも消えていた。」
- 4「区役所についた時は夜の礼拝の時間だったみたいで、その場にいる人らは皆して床にひざまずいていた。」
- 3「ユラはオレを三畳にも満たない部屋に招き入れた。」
- 2「今日は給料日。久しぶりに楽しいことをしに行こうかなっと足取りも軽い。」
- 1「天使様達がこの世界を変えようと宇宙で闘われたらしい。」
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